重量物運搬会社の「アチハ」(大阪市住之江区、阿知波孝明社長)は、「デゴイチ」の愛称で知られる同社所有の「D51形蒸気機関車」を、植物由来のバイオ燃料で走らせることに成功した。地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素(CO2)排出量が増えないクリーンなSLという。環境教育の一環として、ゴールデンウイークには、有田川町徳田の有田川鉄道公園で、子ども向けの乗車体験イベントを開く。
同社が所有するデゴイチは、1943年に製造された車両。愛知県の個人から譲り受け、2017年に同公園に搬入した。
その後、軽油を燃料とするコンプレッサーを用いた圧縮空気方式に変えるなど改良。地球環境問題が深刻化し、世界的に脱炭素化の流れが加速する中で、SLを後世に伝え子どもたちの環境教育にも活用してもらおうと、軽油の代替燃料として、使用済みの植物性の食用油を精製した純度100%のバイオ燃料で走行できるよう、さらに改良、試走を重ねてきた。
バイオ燃料も燃焼する際に微量の二酸化炭素を排出するが、原料の植物が光合成で吸収した二酸化炭素が大気中に戻ることから、濃度に変化はない「CO2フリー」。同社によると、液体のバイオ燃料を使ったSLの走行は世界初という。
同社は有田川町と協力し、5月3日から5日まで、同公園で子ども向けの乗車・運転体験イベントを実施。園内の線路約200㍍を往復する。一日4回の運行を予定し、体験料は小学生以上が100円。小学生に限り、使用済み食用油500㍉㍑を持参すれば1人無料になる(先着200人)。
同社は、地域内でエネルギーを補い合う「地産地消型」のエネルギー循環モデルの確立を目指しており、3日間で使用するバイオ燃料100㍑分の使用済み食用油を、一般家庭から回収することを目標にしている。
また、旅行会社のJTBと連携し小学生を対象したSLの運行体験会もあり、元国鉄出身の機関士が説明する。26日までJTB「旅いく」サイトで受け付ける。
同社は重量物の運搬技術を生かしたSLのリース事業も展開。アチハSL鉄道事業推進室エグゼクティブ・プロデューサーの次田尚弘さんは「SLは石炭を燃やして走るイメージが強いかもしれませんが、今やCO2フリーのクリーンな乗り物。子どもたちに、使用済み油でSLが走る感動を味わい、『自分も地球環境の保全に貢献した』と自覚を持って帰ってもらい、日頃の節電など生活に生かす動機付けになればうれしい」と話している。
乗車体験に関する問い合わせは同公園(℡0737・52・8710)。
バイオ燃料で走るデゴイチと次田さん㊧や機関士、整備士の皆さん