和歌山市や日高地方を舞台に、若い男女の逃避行を描いたオール和歌山ロケの映画『ソワレ』が製作されることになった。11日に和歌山市内で監督やプロデューサーが記者会見で発表し、海外の映画祭への出品も視野に「素晴らしい和歌山の魅力を世界に発信する映画にしたい」と意気込みを語った。撮影は7月から8月にかけて予定。2020年の秋までに全国公開を目指している。
福岡県出身の映画監督、外山文治さん(38)が脚本と監督を務める。外山監督は短編『此の岸のこと』が「モナコ国際映画祭2011」で最優秀作品賞など5冠を達成。長編デビューとなった『燦燦―さんさん―』は全国38館で上映され、「モントリオール世界映画祭2014」から正式招待を受けるなど注目の監督。
映画は、和歌山市出身のプロデューサー前田和紀さん(54)が、外山監督に依頼し実現。前田さんが手掛け、市内で撮影された『ちょき』(16年公開)、太地町を舞台にした『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる』(18年公開)に次ぐ、オール和歌山ロケの3作目となる。主演は若手実力派の村上虹郎(にじろう)、オーディションで選ばれた芋生悠(いもう・はるか)。
作品名の『ソワレ』は、陽が暮れた後の時間を指す。役者を目指しながらも生きる意味や夢を見失いかけている青年と、高齢者施設で働く女性が出会い、ある事件をきっかけに先の見えない逃避行に出るという切ない恋が描かれる。
企画・製作は、俳優の豊原功補さんや小泉今日子さんらで作る「新世界合同会社」。この日の会見で、豊原さんは「昨年9月に映画の製作会社を立ち上げ、われわれとしても第1作目。世界に通用する、中身のあるものにするべく準備を進めている」と決意を語った。
監督らは昨年の夏に初めて和歌山を訪問。ロケ地選びのために名所などを巡り、地元住民とふれ合いながら、映画の構想を膨らませていったという。
外山監督は「長期の滞在で、自然の豊かさ、沈みゆく夕陽の美しさ、人々の生活にふれ、映画とマッチするのを強く感じた」と振り返り「この素晴らしい風景を、どう物語に閉じ込められるかが私の大きな役目」と語った。
昨年末、日高エリアでは官民一体となった御坊日高映画プロジェクト実行委員会(阪本仁志委員長)が発足。名誉顧問に自民党幹事長の二階俊博衆院議員と仁坂吉伸知事が就き、御坊・日高7市町の首長、経済や観光などの団体代表で構成。1000万円を目標に協賛金を募り、地域を挙げて協力体制をつくっている。
ロケ地は御坊市、日高エリア6町、和歌山市を予定。「安珍清姫伝説」で知られる道成寺の他、煙樹ヶ浜、ぶらくり丁商店街などが候補地という。エキストラを含め、地元の出演協力も検討中。
前田さんは「構想を聞く中で『これは面白い作品になる』と、鳥肌が立つほどの手応えを感じた。早く作品を完成させて皆さんにお見せしたい」と意欲を見せ、外山監督は「和歌山の人が見ても発見があり、こんな美しい風景が自分たちのまちにあるんだという再発見につながればうれしい。皆さん一人ひとりに、自分の映画だと思ってもらえるような大事な作品になれば」と話していた。
映画製作へ意気込む(左から)豊原さん、外山監督、前田さん