県立医科大学(和歌山市紀三井寺)は、65歳以上の高齢者に多い心臓の大動脈弁狭窄(きょうさく)症や大動脈瘤(りゅう)などの治療に対応するため、体内を高解像度で透視できる装置や外科手術設備などの高度な最新機器を一室に備えた「ハイブリッド手術室」を開設する。来年4月に完成し、秋ごろの本格稼働を予定している。
21日、医大の岡村吉隆病院長らが発表した。現在建設中の新病棟に増設する手術室の一つで、約1億6000万円をかけて整備する。
心臓の出口の弁が硬くなり、十分な量の血液が送り出されなくなる「大動脈弁狭窄症」の治療は、開胸手術で人工弁に置き換える方法が標準的だが、高齢によるリスクなどの理由で手術を断念せざるを得ない例がある。
手術が困難な患者に対しては、股などの動脈からカテーテル(医療用の細い管)を心臓まで挿入して人工弁を装着する、体への負担が小さい治療法が考案されており、その実施にハイブリッド手術室が必要となる。
ハイブリッド手術室の設備では、透視装置により患者の血管の様子を高解像度の映像で立体的に把握しながら治療ができ、高度な外科的処置が必要な場合にも対応できる。
大動脈瘤についても、外科手術が困難な患者などに対し、バネ状の金属を取り付けた人工血管(ステントグラフト)をカテーテルで動脈内に挿入し、患部で膨らませて固定する治療法が近年増加しているが、ハイブリッド手術室の設置により、より安全な実施が可能になる。
医大内科学第四教室の久保隆史講師は「高齢や外科手術が困難な患者さんも低侵襲で治療が受けられ、大きな福音となる」と話した。