県は、大規模災害に備える従来の防災・減災対策を人命最優先で再点検し、犠牲者ゼロの実現を目指す新たな施策を示した「県国土強靱(きょうじん)化計画」を策定した。東日本大震災や紀伊半島大水害の被害を踏まえ、南海トラフ巨大地震などの今後の災害に備えるため、津波避難困難地域の解消や堤防のかさ上げなどを盛り込んでいる。
国土強靭化基本法に基づいて策定。地方自治体での策定は全国14番目で、計画は5年間を推進期間としておおむね10年後までに実施するとしている。県は昨年6月、これまでの防災・減災に関する対策を総点検するために「県国土強靱化地域計画対策本部」を設置し、大規模自然災害などに対する脆弱性の評価を行いながら、人命を守ることを最優先にした取り組むべき施策の目標数値や時期を具体的に設定。今月11日に開催した本部会議で計画の内容を決定した。
計画では、人的被害が大きいとされる津波への備えとして、すさみ、串本、那智勝浦、太地の4町22地区の津波避難困難地域を、津波避難ビルや避難路・階段の整備によって平成36年までに解消するとしている他、6港湾10漁港のかさ上げを同年までに完了するとしている。
地震への備えとしては、南海トラフ巨大地震、3連動地震(東海、東南海、南海)での建物全壊を想定し、医療施設や学校、公共施設などの耐震化を促進することの他、住宅の耐震診断の無料化や設計、改修への支援を引き続き行うことなどを示している。
また、貴志川や有田川、日置川など主要7河川の整備▽ため池の保全管理体制の整備▽救助・救援に係るルート強化を高めるための高速道路4車線化や紀伊半島一周道路の実現▽復旧・復興に向けた体制づくりと人材育成―などを盛り込んでいる。
仁坂吉伸知事は計画について「『犠牲者ゼロ』を統一的に書いているものは他県になく、これを県の基本哲学にしたい。数値目標を立て、具体的な対策で実現していきたい」と話している。