地元産の釉薬(ゆうやく)にこだわって作陶し、陶芸を通じた国際交流にも力を入れてきた岩出市根来の陶芸家・清水均佳(まさよし)さん(67)。県と米国フロリダ州の姉妹提携締結20周年を記念し、同州タラハシで今月末まで、清水さんと交流のある米国陶芸家3人との陶芸展が開かれている。清水さんは「文化を通じ、和歌山とフロリダの友好が民間レベルで広がっていけばうれしい」と話している。
清水さんは高校卒業後、東京の彫刻家に弟子入りするも、その後すぐに陶芸の道へ転向。和歌山市の故・橘薫氏に26年にわたり師事した。仕事の傍ら趣味で陶芸を続けていたが、平成7年に47歳で、それまで勤めていた住友金属工業(現・新日鐵住金)和歌山製鉄所を早期退職。
平成7年に岩出市根来に登り窯を構え、根来一乗窯陶芸教室を主宰。海南市雨の森にも工房を開き、18年には米国フロリダ州ガルフコースト窯業協会の依頼を受け、穴窯の焼成指導。25年には同州から3人の陶芸家を招いて共に作陶するなど友情を深めた。
力を注ぐのは、地元の果実灰を原料にした釉薬による作品づくり。九度山の柿や下津のミカン、南部の梅などを使う。冬に枝や葉を剪定(せんてい)し、燃やした灰を水に溶かして不純物を取り除き、長石や珪石(けいせき)などを混ぜ合わせ、時間をかけて釉薬を作り上げる。
信楽や備前の土を使うが、土や窯が違えば発色や風合いも変わる。温かみのある白や美しい深緑のビードロなど、自然から生まれた灰の釉薬が命を吹き込まれ、美しい器になる。
今回の展示は同州務長官のオフィス内ギャラリーで開かれ、清水さんのミカン灰釉の作品など約10点を紹介。州務長官には、太平洋をイメージした鮮やかなブルーのつぼを贈った。
毎日が試行錯誤の連続で、アイデアは水のように湧き出てくるという清水さん。手掛けるのは高額なものでなく、毎日の食卓に並ぶような日用雑器だ。
「やったぶんだけ結果が出て、陶芸ほど面白いものはない。いろんなことに挑戦して、いろんなものを作りたい。きのうより、きょう、いいものを作っていたい。もっと違うことで周りを驚かせたいね」
陶芸への情熱は、まだまだ冷めることはない。