本堂の両脇を囲むように整然と並んだ約450体の羅漢像――。和歌山市和歌浦東の五百羅漢寺(池田道俔住職)に、見る者を圧倒するように安置されている。しかし、頭や手など体の一部が欠落するなどの傷みが見られ、同寺では現在、破損の激しいものから修復を進めている。同寺は徳川家ゆかりの由緒ある禅寺で、池田住職(54)は「1体ずつ時間はかかるかもしれませんが、後世に伝えるため全ての羅漢さまを修復したい」と話している。
同寺は紀州徳川八代藩主・重倫(しげのり)の祈祷寺として、明和元年(1764)に建立された。曹洞宗大本山・永平寺(福井県)直系の寺。本尊の釈迦如来座像は、重倫の母・清信院が寄進したもので、本堂には十代藩主・治宝(はるとみ)直筆の額も掲げられている。
羅漢像は木造で、天保8年(1837)から約5年間に西浜御殿の女中や商人らが先祖供養や天下泰平を願って再興奉納。しかし昭和36年の第2室戸台風により本堂の東側の壁が抜け落ちるなどし、羅漢像もかなりの被害を受けたという。
1体を修復するのに掛かる費用は約30万円。これまで同寺の他、檀家や信者らによって30体ほどが修復を終え、真新しい羅漢像も並んでいる。池田住職は「一人ひとりの長年のご供養の思いを受け継いできたもの。まずは寺が主となり、年に1体でも2体でも気持ちを込めて修復していければ」と話す。
羅漢は釈迦の教えを継ぐ弟子たちで、「たくさんある」との意味合いで「五百羅漢」と呼ばれる。像はそれぞれの修行のかたちが表され、笑みを浮かべていたり、座禅を組みながら眠っていたり、顔の表情もさまざま。どこかに自分や親兄弟に似た顔を見つけることができるといわれている。五百羅漢を安置する寺は全国的に見ても数カ所しかないとされ、県内では唯一。池田住職は「皆さんにお参りいただき、手を合わせていただくだけでもありがたい」と話している。
問い合わせは同寺(℡073・444・2473)。