芸術文化の振興や文化財の保護などに功績のあった個人や団体に贈られる平成26年度地域文化功労者文部科学大臣表彰に、県内から、観世流能楽師の小林慶三さん(83)=和歌山市吹上=と、同市に活動拠点を置く和歌山児童合唱団が選ばれた。表彰式は6日に東京都の文科省で行われた。
小林さんは和歌山市に生まれ、幼い頃から、観世流能楽師の父・憲太郎氏に指導を受け、子方(子役)として鷺森別院の能舞台などに出演。大阪市立大学を卒業後、京都の片山九郎右衛門氏に師事し、昭和37年に独立。歴史ある小林観諷会を継承し、「市民能」「けんぶん能」の企画・公演、県民謡曲流友会(現・県謡曲流友会)の設立に尽力するなど、和歌山の能楽謡曲界の復興の中心を担ってきた。
文化庁から重要無形文化財能楽保持者の認定を受け(昭和53年)、県文化功労賞(平成19年度)受賞。現在も県内外で公演を重ね、数年前からは後進育成のため、一般や子どもを対象にしたワークショップにも尽力。指導を受けた生徒が能舞台で公演するまでに育っている。
若い世代が伝統芸能にふれる機会を増やそうと、県内の高校や大学で精力的に実技指導をする他、文化庁の伝統音楽普及事業では、教員を対象に能楽指導の講師を務めている。
小林さんは「地方で目立たずに続けてきた活動が、県の文化振興に少しでもプラスになったのであればうれしく思います。これからも若い芽が開くよう、古典芸能に理解と協力が得られれば」と話している。
和歌山児童合唱団は昭和33年に団員32人で創立。現在は小学生から高校生まで約150人が所属している。県民合唱祭や県児童合唱団合同演奏会の他、昭和45年の万国博覧会や、平成2年の国際花と緑の博覧会など国際的な催しにも参加。
国際交流の推進にも積極的に取り組み、海外の児童合唱団との共演も多い。昭和52年に和歌山市と姉妹提携を結ぶ米国べーカースフィールド市とカナダ・リッチモンド市の訪問を皮切りに、中国やロシア、オーストリア、ベルギーなど海外演奏旅行を行う。平成3年度には県文化奨励賞受賞。
最近は地元和歌山のわらべ唄や民謡など、日本の民族音楽を素材に芸術性の高い作品を演奏。国際コンクールで優秀な成績を収め、世界的な児童合唱団として活躍している。
同団育成会長の岩橋延直さん(80)は「歴史の積み重ねの重要性を感じます。受賞は子どもたちの大きな励みになるはず。少子化で合唱団の数も減る中、県全体の合唱音楽普及のため合唱人口の裾野を広げていきたい」と話している。