梅の成分が不妊治療に効果があるとする研究成果を、県立医科大学などの研究グループが28日、発表した。脱塩濃縮した梅酢を不妊症の女性に毎日飲んでもらったところ、卵子の質の改善に効果がみられ、受精、妊娠にも高い確率で成功。梅の「3、4―DHBA」という成分が質改善に寄与している可能性があることを突き止めた。
医大で会見した産婦人科「うつのみやレディースクリニック」(和歌山市)の宇都宮智子院長らによると、不妊や流産は加齢による「卵子の老化」が大きな要因の一つ。体の酸化と同様に卵子も酸化して質が低下するといい、梅の抗酸化作用に着目して研究は進められた。
宇都宮院長は、難治性の不妊症の女性患者18例(平均年齢39・2歳)に、女性ホルモンなどの原料になるホルモン「DHEA」を2カ月間投与し、約4割の7例で妊娠に成功。妊娠に至らなかった患者のうち、同意の得られた9例にDHEAと梅酢を2カ月間飲んでもらったところ、5割超の5例で妊娠に成功した。
さらに別の不妊症患者10例(同35・6歳)にDHEAを使わず梅酢のみを飲んでもらったところ、6例で妊娠、4例で出産に成功した。
DHEAと梅酢を飲んだ患者と、飲んでいない患者の卵子を比較すると、明らかに飲んだ患者の卵子の方が色や形が良かったという。
このことを受け、医大などで梅の有効成分を追究。3、4―DHBAが、卵を形作る「顆粒(かりゅう)膜細胞」を酸化ストレスから守り、同細胞をより活性化させることで良質な卵形成に寄与している可能性があることが分かった。
会見には宇都宮院長の他、医大の宇都宮洋才(ひろとし)准教授、河野良平助教、和歌山工業高等専門学校の奥野祥治准教授が出席。これまで梅の制菌作用などの言い伝えを検証してきた宇都宮准教授は、「梅は不妊治療にいい、という言い伝えができる日が来るかもしれない」と期待を込めた。