経済産業大臣指定の伝統的工芸品「紀州桐箪笥(たんす)」の魅力を学ぼうと、和歌山大学付属小学校(和歌山市吹上)の3、4年F組と5年C組の児童43人は19日、紀州桐箪笥協同組合のシガ木工(同市延時、志賀啓二社長)を訪問。たんすを作る際の木くぎ打ち、かんな削りなどの工程を体験し、地元の伝統工芸への理解を深めた。
大切な地域文化の継承者である職人との触れ合いを通じて、伝統工芸に興味や関心を持ってもらう授業の一環。
工房で児童を迎えた志賀社長(65)は、材料である桐の木は柔らかいので木でできたくぎを使うこと、米ぬかと一緒に木くぎを熱して水分を飛ばすことにより、ぬかの持つ油分が木くぎの表面に付き、打ち込む際に滑りが良くなることなど、伝統の技を丁寧に解説した。
児童は、同社で働く伝統工芸士から直接指導を受けながら、桐板に金づちで木くぎを打ち込んだり、かんなで削ったりした他、白い木肌を際だたせるための「砥(と)の粉」をはけで塗る作業を体験。制作の工程を順番に回り、最後に完成した化粧たんすを目にすると、笑顔がこぼれていた。
5年C組の平井暖人君(10)は「手で作業することで美しいたんすができると分かった。伝統を守っていくために『こんなにいいんやで』と伝えていきたい」と笑顔。児童たちは今後、学んだことを地域に発信することにしている。
同社は江戸末期の創業。現在9人の職人がおり、うち5人が伝統工芸士の認定を受けている。志賀社長は「子どもたちに喜んでもらえて良かった。次世代に技術を残していくために、いい物を作り、国内外に広め、皆さんに喜んでもらうことで業界を盛り上げていきたい」と、伝統の継承に懸ける思いを話した。
今回の体験学習に協力した県企業振興課の西川隆博副課長(53)は「和歌山には伝統的工芸品があり、その技術を持った伝統工芸士がいることを、体験を通じて知ることが大切。和歌山を自慢できる子どもたちに育ってもらいたい」と話していた。
【紀州桐箪笥】昭和62年に伝統的工芸品の指定を受けた。素材に白く、軽く、柔らかな桐の木を用い、伸縮や狂いが少ないのが特長。古くは江戸時代から、衣装や財産の保管に使われてきた。