致死率が高いとされる感染症「エボラ出血熱」が拡大しているアフリカ西部を救援するため、5月29日まで現地に派遣されていた日赤和歌山医療センターの古宮伸洋医師(39)=感染症内科部副部長兼国際医療救援部=が帰国し、11日、同センターで報告会を開き、現地での活動や現状を話した。
エボラ出血熱の感染対策への職員派遣は日赤では初めてで、古宮医師は香港の看護師3人らでつくる災害調査調整チームの保健部門リーダーとして、4月26日からリベリア共和国で活動。ことし初旬にギニア共和国でエボラ出血熱の感染が初めて確認され、隣国のリベリア、シェラレオネ共和国にまで拡大している。WHO(世界保健機関)によると、5月15日時点で248人が感染し、171人が命を落としている。
リベリアでは5月9日までに12人が感染。古宮医師は主に各村のボランティア団体や地元住民に対し、エボラ出血熱の正しい知識や手洗いなどの感染予防策の啓発に力を入れて取り組んだ。
エボラ出血熱の詳しい情報は知られておらず、確実な治療法がないのが現状。原因菌「エボラウイルス」はコウモリやサルが持つとされている。地元住民はそれらの動物を食べることで感染すると認識しているが、感染患者の体液の接触が原因という説が有力とされている。
古宮医師はリベリアの200人に対してインタビュー調査し、約8割が情報源にラジオを活用していることから、5月中旬からラジオでエボラ出血熱の理解を図る情報を発信してきた。古宮医師は「全体的にリベリアの衛生面を向上させることが感染症を防ぐことにつながる」と課題を話した。エボラ出血熱は現在も発症しており、赤十字は今後も救援活動を行う。