和歌山市中之島の児童文学作家、太田甲子太郎(かしたろう)さん(65)が、県内の民話を収めた3冊目の小冊子「続々・紀州に伝わる民話」を自費出版した。太田さんは「和歌山は民話の宝庫。方言を知らない人が増える中、紀州の土語(どご)を忘れないよう、遠い祖先からのメッセージを語り継いでもらいたい」と話している。
A5判38㌻。1冊200円で同市ぶらくり丁内の店舗などで販売している。収益の一部は県内の社会福祉施設に寄付する。
太田さんは30歳ごろから県内各地で直接民話や伝承を聞いて回り、集めた民話は約100話。地元に伝わる民話を伝えようと、これまで2冊の民話集を発行し、ぶらくり丁の活性化や台風12号による紀伊半島水害の支援に充てている。冊子は高校の授業で教材に使われたり、書店を通じて続編のリクエストが寄せられるなど好評という。
今回は紀南・紀北・紀中に伝わる13の民話を収録。冒頭では、親交のある漫画家のマエオカテツヤさんが「おいやんの民話」と題して、柔らかい和歌山弁で民話風に太田さんの紹介文を寄せている。
寺に伝わる人食い猫と大ネズミが登場する「阿弥陀寺の白猫」(和歌山市)、根来寺の僧兵と豊臣秀吉軍が戦う「根来忍者・小密茶」(岩出市)、白い肌に憧れる娘の「島になったいとはん」(美浜町)など、楽しい話から少し怖い話まで、子どもから大人まで楽しめる民話を紹介。挿し絵も太田さんが担当し「~よし」「~やひて」など、ゆったりとした語り口で進む。
太田さんは「民話には生活を豊かにし、心を癒やしてくれる力がある。こんな方言があるのかという新しい発見にもなれば」と話している。問い合わせは太田さん(℡073・431・6888)。
冊子の取扱店は次の通り。わかやマーケット、番茶屋、レモネードカフェ(ぶらくり丁)、フォルテワジマ、小西屋、カフェル・ポン(本町)、ダイニングUO(ウーオ、北新)、宮脇書店ロイネット和歌山店(七番丁)。