日本列島の太平洋岸に沿って北上する黒潮の流路が東海沖で南に大きく離岸する現象が起き、各地の漁業に影響が出ている。県内でも紀南地域のアジ・サバ漁などが深刻な不振となっている。
気象庁によると、黒潮が大きく離岸すると、黒潮と本州南岸の間に冷水域が発生し、回遊魚などの漁場の位置に影響を与える。平成16年7月~17年8月に発生した「黒潮大蛇行」の際は、県南部の春のカツオ漁が大きな打撃を受け、漁獲量は平年の3分の1程度に落ち込んだ。
県水産試験場(串本町)によると、今回も黒潮南下の影響で県南部沖に魚が集まらず、例年のような漁場が形成されていないという。
日ノ御埼(日高町)以南の紀伊水道でのまき網漁を見ると、7~8月のマアジの漁獲量が、不振だった昨年の147・8㌧(平成15~24年平均317・1㌧)に対し、ことしは8月21日まででわずか1・4㌧。同時期のサバ類も、昨年の168・9㌧(同597・2㌧)に対し、ことしは32・6㌧。和歌山南漁協すさみ支所のイカ釣り漁も不振で、同時期の漁獲量は、昨年の44・2㌧に対しことしは5・0㌧にとどまっている。
気象庁が今月6日に発表した予測によると、黒潮の離岸は2カ月程度は継続する見通し。県水産試験場は「秋まで黒潮の離岸が続けば、アジ・サバ漁、定置網などが引き続き影響を受ける」と話しており、今後の推移に注目している。