和歌山、奈良、三重3県にまたがる吉野熊野国立公園の和歌山県内区域が大幅に拡張されることが決まった。8月の中央環境審議会答申を受け、24日に官報告示される。拡張区域は、みなべ町から串本町に至る沿岸の陸海域で、国の名勝・円月島(白浜町)をはじめ県南部の景勝地や希少な海洋生物の生息域などが含まれている。
環境省近畿地方環境事務所によると、吉野熊野国立公園は昭和11年2月1日に指定され、紀伊半島中央部の山岳景観、そこを源として深い渓谷を形成しながら流れ下る河川景観と、河川が注ぐ熊野灘沿岸の海岸景観が特徴的な公園。
近年、従来の公園域に隣接する県内の沿岸海域にサンゴ礁生態系や干潟、藻場などが分布し、多様で連続性を持つ生態系があること、日本列島の形成過程を示す特徴的な地質が点在していることなどが高く評価されるようになり、環境省が国立公園の再編を目指してきた。
今回の区域変更では、「田辺南部白浜海岸県立自然公園」と「熊野枯木灘海岸県立自然公園」を含む紀伊半島沿岸海域を国立公園区域に編入し、編入区域と既存の指定区域の海域に、海域の景観と海洋生物多様性の保全を目的とした海洋保護区「海域公園地区」を指定する。
公園区域の面積は、変更前の8万303㌶から9万3170㌶(陸域6万1406㌶、海域3万1764㌶)に拡大。ナショナル・トラスト運動で知られる天神崎(田辺市)や太古の地殻変動の痕跡「フェニックス褶曲(しゅうきょく)」(すさみ町)の他、世界最北のテーブルサンゴ群集、オオカワリギンチャクなどの希少種の生息域が含まれる。
今回の大規模拡張を記念して、紀南地方では今月下旬から来年1月ごろにかけて、自然体験やガイドツアー、展示会、写真コンテストなどの多彩なイベントが続々と行われる。情報は近畿地方環境事務所ホームページ(http://kinki.env.go.jp/to_2015/post_30.html)などで発信している。