小さな体一つで多彩な登場人物を演じ分け、座布団の上から笑いを生み出すのは子ども落語家「勇気出し亭うな晴(はる)」こと和歌山市立雑賀小学校5年生の中部晴陽(はるひ)君(10)。中部君は先月、宮崎県で開かれた「第7回ひむかの国こども落語全国大会」小学生の部に出場し、優秀賞に輝いた。
同大会は「笑点」の司会でおなじみ落語家・桂歌丸さんが名誉会長を務め、7月25、26日に開催。小学生の部には事前のビデオ審査を通過した24人が出場した。さらに予選があり、中部君は4人による決勝に進出。出家した八五郎が自分の出家名を忘れ、思い出そうと騒動を起こす上方落語の「八五郎坊主」を演じ、最高賞の最優秀賞こそならなかったが、全国でわずか3人の優秀賞に選ばれた。
中部君が初めて落語に興味を持ったのは3歳のころ、上方落語を題材にしたNHKドラマ「ちりとてちん」を見たのがきっかけ。落語の場面転換の際などに、見台をたたくのに使う小拍子を見て、まねをしようと思い、カスタネットをたたいていたという。
その後は落語がテーマの絵本を読んだり、付属のCDを聞いたりするようになり、「ん廻し」を覚え、祖父母や親戚の前で披露していた。
小学1年生の時、落語会などの活動をしている市民団体「わかやま楽落会」の寄席を見て入会。高座名は、人前で演じるのが恥ずかしい自分が勇気を出せるようにと「勇気出し亭」、好物のウナギと本名の文字から「うな晴」とした。
同会メンバーからは、登場人物の演じ分けなど落語の基本から学び、現在も稽古を積む日々。ネタを覚える時には、毎日少しずつ話が書かれた紙を目で読み、次に声に出し、最後は目を閉じて言えるかを確認する。
今回の大会は、日ごろの稽古の成果から、大舞台でも「緊張はしていなかった」。演じている時は、両親からアドバイスされていた「登場人物によって話す速度に気を付けることと、笑顔ではきはきと話すことを考えていました」と振り返る。中部君の熱演に会場は笑いの渦に包まれた。
優秀賞については「最優秀賞じゃなくて残念だけど、賞状がもらえてうれしかった」と話し、今後も「お客さんをどんどん笑わせたい」と笑顔を見せる。