体内に存在する生理活性化物質「オンコスタチンM」に、糖尿病やメタボリック症候群を改善する効果があるとの研究結果を県立医科大学(和歌山市紀三井寺)の森川吉博教授らのグループが発表した。森川教授は「これまで特効薬がないとされてきた脂肪肝の改善も見込める。5年後をめどに臨床試験の開始を目指し、新薬としてできるだけ早く世に出したい」と話している。
同医大解剖学第二教室の森川教授と小森忠祐助教がこのほど明らかにした。
森川教授らは7年前からオンコスタチンMに着目。この物質が欠損したマウスは、普通食でも加齢によってメタボ体質になり、高脂肪食を与えると体重が増加し脂肪肝も重症化することが分かり、オンコスタチンMがメタボリック症候群の治療に使えないかと考えた。
遺伝性肥満のマウスと高脂肪食を投与したマウスに、オンコスタチンMを一日2回、1週間投与したところ、どちらも体重が約3㌘減少。体重60㌔の成人男性に換算すると、4㌔減に相当する結果が出た。さらに脂肪肝が改善され、血中のコレステロールや中性脂肪、血糖値も低下。オンコスタチンMには脂肪を燃焼させ、蓄積させにくくする効果があることが明らかになったとしている。
これまで開発されているメタボリック症候群の治療薬に比べ、少量で短期間で治療効果が見込めるため、副作用も少なくて済むのが利点という。また、それら他の薬と併用することでより大きな効果が期待できるとし、糖尿病や肥満改善の新たな切り札として期待が高まる。