“猫の駅長”として国内外から人気を集め、22日に急性心不全のため死んだ和歌山電鐵㈱(本社=和歌山市伊太祈曽)貴志川線の三毛猫「たま」(メス、16歳)の社葬が28日、貴志駅(紀の川市貴志川町神戸)構内で営まれた。全国各地から、たまを愛した3000人以上のファンらが駆け付け、花をささげるなどして別れを惜しんだ。
社葬は同社の小嶋光信社長が葬儀委員長、たまの飼い主の住友利子さんが喪主を務め、仁坂吉伸知事、中村愼司紀の川市長、尾花正啓和歌山市長、貴志川線の未来を“つくる”会の濵口晃夫代表らが参列。地元の大国主神社の山本幸泰宮司が斎主を務めた。
駅舎の隣には構内の様子を映すモニターが用意され、大勢のファンが葬儀を見守る中、参列者は弔辞を読み上げ、たまの観光振興への貢献などをたたえ、ねぎらった。
小嶋社長は「単なるマスコットではなく、イベントや取材の時には帽子をかぶり、改札台の上からお客さまの見送りやお出迎え、プラットホームの見回りと仕事をしている姿がマスコミやインターネットを通じて世界中に報道され、一躍人気者になりました」「和歌山電鐵と全国の地方鉄道の救世主として、神様の意を受けてこの世に現れたかのような、たまちゃんと一緒に働けたことを誇りに思っています」と弔辞を述べ、たまとの出会いに感謝。また、敬意と愛情を込め、「社長代理・ウルトラ駅長たま様 名誉永久駅長を命ず」と最後の辞令を言い渡し、たまの偉業を永遠に残していくとした。
小嶋社長が玉串をささげる際には、同線伊太祈曽駅長の三毛猫「ニタマ」も横に並び、たまを見送った。葬儀の終わりには、たまの一生を共に過ごした住友さんがあいさつし、「たま駅長はこれからも、皆さん一人ひとりのために頑張ろうと思っている。みんなの心の中で生きたいと思っている。いつまでも和歌山電鐵のたま駅長を忘れないでいてください。本当にありがとうございました」と涙をぬぐった。
社葬には180通以上の弔電が届けられた他、中東カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」など海外メディアも合わせて30社以上の報道機関が集まり、世界中に社葬の様子が伝えられた。愛らしいたまの写真が並べられた献花台には花束や手紙、似顔絵、キャットフードなどがあふれた。社葬後、構内のたまの祭壇にはファンが行列をつくり、手を合わせてたまの冥福を祈っていた。
三重県伊勢市から愛猫2匹を連れて訪れた世古尚子さん(45)は「貴志駅にはたま駅長を目当てに2回来ました。訃報を聞いた時はとても悲しかった。たまを見送るためにこんなに人が集まり、たくさんの人から愛されていたんだと思います」と別れを惜しんだ。
今後は、8月10日の五十日祭の翌11日に、貴志駅ホームにある「ねこ神社」横にたまの墓を建て、「たま大明神」として祭るという。