和歌山市三葛の丸山安子さんの遺作写真展「追憶 思い出の道標(みちしるべ)」が30日まで、三葛の画廊喫茶「安堵」で開かれている。昨年10月に84歳で亡くなった安子さんがこれまでに撮りためた中から、夫の英治さん(84)が、夫婦の思い出が詰まったフィルム写真18点を出品している。
勤め先だったミノルタカメラの関連会社で出会った2人は、お互い写真を共通の趣味に、どこへ行くにも一緒。共に40年以上、写真を撮り続けてきたという。
展示されているのは、静かな朝の和歌浦を一隻の舟が進む風景や、桜を背景に走る貴志川のいちご電車、寺社や花火など、四季折々の美しい風景。
マクロレンズの接写を得意としていた安子さんの、花や小さな生き物を写した作品も並び、まるで英治さんと安子さんを象徴するかのような、チョウがたわむれる「仲よし」も紹介されている。
英治さんは「一枚一枚、それぞれに楽しい思い出が詰まっています」と話す。夜中に高野山に近い立里(たてり)荒神へ向かい、朝焼けの雲海を待ったこと、朝のニュースで金閣寺が雪化粧したと聞き、2人で朝一番の電車に飛び乗ったこと――。
同じ場所で同じ物を撮影しても「出来上がったものは、まったく違うもの。妻の方がうわてでしたね」と笑顔。
同店は、これまで夫婦で2人展を開いたり、よく通った思い入れのある場所。英治さんは「こうして皆さんに見ていただいて、いろんなお話を聞ける。やっぱり写真をやっていてよかった」と話し「まだたくさん作品があって、1回の展示では済まんね」と思いを新たにする部分もあるという。
来店した、2人と長い付き合いというしおたに循環器内科クリニックの塩谷雅彦院長(56)も「とにかく仲の良いご夫婦でした。安子さんの優しさが、作品からも伝わるよう」と話していた。
午前9時から午後4時。最終日は正午まで。金曜定休。問い合わせは同店(℡073・445・2214)。