㈱モリサワ(大阪市)が主催する書体デザインコンテスト「モリサワタイプデザインコンペティション2014」和文部門の「明石賞」に、和歌山市の書家・北原美麗(びれい)さん(50)、本紙連載「そらそうと」でおなじみのグラフィックデザイナー・井口博文さん(52)による「北原行書」が選ばれた。
同賞に選ばれた書体は近い将来製品化されることが約束されており、手書きの温かみがある北原さんの筆文字が、今後全国のさまざまな場面で活用されることになりそうだ。
同コンペの開催は平成24年に続いて2度目。世界24の国や地域から386点の応募(和文部門135点、欧文部門251点)があった。明石賞は、製品化にふさわしい優れた作品1点に贈られる。同社は印刷・出版業界でフォント(活字書体)のシェア第1位を誇る。
2年ほど前から井口さんが北原さんに書の指導を受ける中で、2人の中に「既存の筆文字はタイピングすると少し違和感がある」との思いがあったそう。「筆文字がフォントになったらいいのにね」と話し合う中でコンペの存在を知り、北原さんの筆文字をパソコンに読み込みデジタル化。井口さんが文字配置のバランスや余白を調整して仕上げた。
受賞した北原さんの字体は、基本に忠実に楷書を少し柔らかくしたような文字が特徴。審査員からは「書家の個性を出したような文字でなく、お手本のような美しい文字」などと高く評価された。
手書き文字の良さを広めようと活動する北原さんは「『自分では書けない』という方にも、パソコン上でもコンピューターの文字だけでなく、手書き文字を目にする機会が増えるのはうれしいこと」と笑顔。井口さんは「デジタル化が進む中でも、手書き文字を入り口に、優しさやほんわかとした温もりの心を知ってもらえれば」と話している。
また、同社の扱う字体がNHKの要請を受け、2020年の東京オリンピックの番組テロップなどに使われる見込みで、北原さんの筆文字書体が登場することに期待も膨らむ。
北原さんは「パソコンを使った広告や宛名書きで使われる文字が、手書きのように見えてしまう日がくるのが楽しみです」と話している。