県の特産品であるパイル織物を活用した新しい廃水処理システムを、県工業技術センター(和歌山市)、オーヤパイル㈱(高野町、大家健司社長)、エコ和歌山㈱(田辺市、中田祐史代表取締役)の3者が開発し、第3回ネイチャー・インダストリー・アワード(大阪科学技術センターなど主催)の技術開発委員会賞を受賞した。地場産業の新たな可能性を開く技術として、活用が期待される。
同アワードは、若手研究者を支援するための事業で、「自然に学ぶ」「自然を利用する」「自然と共生する」をテーマに研究を募集。今回は41件の応募の中から8件が受賞しており、3者の排水処理システムは、実用化の可能性が高いとして評価された。地方自治体の公設研究機関としての受賞は初めてとなった。
今回受賞したのは「食物連鎖を利用したパイル担体活性汚泥法」。このシステムは、食品加工場で発生する産業廃棄物「余剰汚泥(微生物群)」の80%以上の削減を実証し、排水処理に掛かるコストも削減される画期的な手法という。
活性汚泥法とは、活性汚泥(微生物群)に汚水中の有機物を食べさせ、汚水を浄化する排水処理方法で、食品加工場などで使われることが多い。しかし、微生物が増えすぎると、効率的に排水処理ができなくなり、余剰汚泥として処分しなければならない。
今回の研究では、微生物の種類を増やし、微生物の食物連鎖を活性化させることで余剰汚泥を減らそうと考案。微生物が付着しやすいアクリル素材でできたパイル織物に着目し、平成23年からみなべ町の梅加工業者の既存設備で実証化試験を進めてきた。
試験では、既存の活性汚泥槽の形状に合わせたフレームを作成し、短冊状のパイル織物でできた固定化材を槽内に設置。水で流されてしまうことの多かった、廃水処理における食物連鎖の最上位者であるイトミミズの仲間を付着させることで、生態系のバランスを整えた。
その結果、パイル織物の固定化材を設置する前は排水1立方㍍当たりの余剰汚泥発生量が6・46㌔だったのが、3年目には1・07㌔まで約83%削減。日々濃度が変化する食品工場の排水を安定的に浄化するシステムを生み出した。
同センターの山際秀誠主査研究員は「食品排水への適用、経験を重ねており、それなりの効果が出ている。化学排水などの場合は製造物によって異なってくるので、それぞれの実証実験が必要になる。このシステムを幅広く使えるように研究を重ねていく」と話している。