和歌山大学(山本健慈学長)の経営審議に外部から参画している経営協議会外部委員は、国の平成28年度予算の編成作業が始まるのを前に、地方国立大学への予算充実を求める声明を発表した。国が毎年、国立大学に交付している「一般運営費交付金」が大幅に削減される可能性があり、声明では「地方国立大学の存立を危惧せざるを得ない」と危機感を訴え、山本学長は「国民的議論の場が必要」としている。
平成28年4月から始まる国立大学法人の第3期中期目標期間(6年間)に向けて発表したもの。国は28年度から一般運営費交付金の3割を削減し、削減分を取り組みの優れた大学に重点配分する方向で検討している。
同大では同交付金が全体の収入の約4割を占め、25年度は約32億円の交付を受けた。しかし年々削減され、16年度から26年度までの10年間で累計3億円削減されているという。
外部委員は企業経営者や元大学長、弁護士らで構成。正規の教員を減らして特任の教員を雇用するなどして削減に対応してきたが、声明では「経営努力も限界に達してきており、これ以上削減されると教育研究の質の低下を招くことはおろか地域への貢献も十分果たせなくなる」としている。
声明を受けて記者会見した山本学長は、「3割カットされ、3割戻してもらっても、結局通常の教育研究業務をカバーすればそれで終わり、なんら改革的な原資にならないというのが実情。いま地方創生といわれ、各地域の国立大学法人はしっかりその役割を果たしていかなければならないと思っているが、それすら果たせなくなる」と述べた。
また、そういった現状が国民的議論になっていないことが問題とし、「関係省庁と有識者の議論だけで決まってしまうと、政治もそれに従属してしまう。国会議員に議論に参加してもらいたい」と話した。
14日に山形大学の外部委員も同様の声明を発表したのに足並みをそろえて公表した。両大学の声明をモデルケースとして、国立大学協会や各国立大学に送付していく。28年度予算の編成作業はことし夏ごろから始まり、年末には確定する。