現在の東京・赤坂の皇室施設(赤坂御用地)に位置していた、江戸時代の紀州徳川家中屋敷の庭園「西園(さいえん)」を描いた絵図「赤坂御庭図画帖(あかさかおにわずがじょう)」(和歌山市立博物館所蔵)が図録となり、同館から発刊された。同絵図は全国の研究者や博物館関係者が注目する貴重な資料であり、図録には、全15図と解説、庭園を訪問した当時の人々の記述などが収録されている。
「西園」は、尾張徳川家の「戸山園」、水戸徳川家の「後楽園」とともに徳川御三家の名園と称された場所。政治を行う上屋敷とは違い、休憩所や遊園地のような感覚で親しまれていたという。明治維新後に、紀州藩が宮内省に領地を献上。そのころから現在まで、敷地の多くが江戸時代からの造成のまま使用されているという。
図録には、園内馬場で馬に乗り、まりを取り合う打毬(だきゅう)と呼ばれるスポーツや、当時ブームになっていた園芸場、馬に乗りながら弓を放つ「騎射」の様子などが紹介されている。
絵図の作者は、謎が多い画家「坂昇春(さか・しょうしゅん)」。1830年ごろまでに制作されたと推測されている。原本は昭和60年ごろ、県内の古書店で販売されていたのを同博物館が引き取ったという。
図録を編集・執筆した近藤壮学芸員(44)は「江戸時代の大名庭園の様子が分かる貴重な資料なので、1枚1枚楽しんでもらえれば」と話している。
図録発売に合わせて同館では来年3月1日まで、絵図の実物を展示している。
冊子は、A4横版32㌻、オールカラー。価格は600円。同館で販売している。問い合わせは同館(℡073・423・0003)。