紀伊半島大水害から3年。大きな被害を受けた紀南の各地では今もなお、所々で爪痕が残っている。昨年の来県者数が水害前の水準に戻ったといううれしい知らせは、着実に復興が進んでいる証だが、ことしは先月の台風11号で宿泊客のキャンセルが相次ぐなど、天候不順による影響が心配される。「まさか」と思う災害が身近なところで起きる昨今、私たちにできる備えとは何だろうか。
個人の備えとしては非常持出袋の準備や避難場所の事前確認などが一般的だが、避難のタイミングが遅れれば、それらを発揮できない。行政からの情報が届くのをただ待つのではなく、自らの判断基準を明確に持ち行動することが求められるようになってきた。
自らの判断基準を持つことは容易ではないが、自分が暮らす地域に目を向ければ、その判断材料はあるはず。過去の石碑や絵図は先人が後世に伝えようとした証であるし、地名などはその土地の地形に縁があることも多い。
また、地域を見渡せる高い場所から周囲の地形を見ることも有効だ。試しに、筆者は、和歌山市街を一望できる黒沢山(標高約500㍍)に登ってみた。
和歌山城が建つ虎伏山を中心とした、なだらかな丘陵地帯の名残がうかがえ、海からの近さ、紀の川の流れから、津波や河川氾濫が起きた場合の街の姿を想像することは難しくなかった。
防災に限らず「判断」は、虫の目と鳥の目の視点がバランスよくそろってこそ的確なものになるはず。地域に目を向け、自身や家族独自による、防災への「心の備え」の充実も大切だ。
(次田尚弘/和歌山)