和歌山市長選を機に関心が高まっている市の課題の一つ、山口地区の産業廃棄物最終処分場計画。14万筆の反対署名が市に提出されるなど住民の反発は激しく、市長候補6人による先月25日の公開討論会でもこの問題が取り上げられた。6候補はいずれも、現時点で計画に反対の立場を表明しており、新市長誕生後、どのように問題を解決するのか手腕が試されることになる。
市内の産廃の現状を見ると、市内に最終処分場がないため、紀の川市や奈良、兵庫、三重各県の最終処分場、一部を大阪湾広域臨海環境整備センター(大阪湾フェニックスセンター)など市外に持ち出している。
学識経験者や市民団体の代表、産廃排出事業者などでつくる「市産業廃棄物処理指針策定協議会」は平成22年3月、指針を策定(ことし3月改定)。その中には、「原則、自区内処理を目指すためには、市域内から発生する産業廃棄物の最終処分場を市域内に確保することの見極めが必要」と明記され、市内に最終処分場を確保する必要性に言及している。
問題の山口地区の計画は、処分場の面積が10万8100平方㍍、容量が約230万立方㍍。安定5品目(廃プラスチック類、ゴムくず、ガラス・陶磁器くず、金属くず、がれき類)を受け入れる。計画埋め立て年数は22年。県廃棄物実態調査報告書(23年度実績)によると、市内で排出された安定5品目のうち、中間処理後の最終処分量は3万4000㌧であり、計画の容量は十分に排出量をまかなえ、自区内処理も可能な計算となる。
同計画についての6候補の見解を紹介する(届け出順)。
尾花正啓候補は、産廃処分場は必要とするが、住民の疑問や不安を尊重し、事業者に情報公開や説明責任を求める。
中津孝司候補は、大規模な森林伐採による川の大洪水、滝畑川の汚染、現場の地滑り崩壊などの危険性を指摘する。
遠藤富士雄候補は、現地が県の指定する山地災害危険地区付近で、リスクが高く、適切な場所は別にあると主張。
小早川正和候補は、地滑りが危惧される場所で安全配慮を怠っていると考え、建設後の業者の倒産リスクも指摘。
浜田真輔候補は、山口地区は不適切とし、域内処理の観点から、市内の公有水面の埋め立て地を処分場にすると提案。
芝本和己候補は、安定型処分場には問題があり、計画は長期間、維持管理できる体制にあるように思えないと批判。
【メモ】産業廃棄物最終処分場には、廃棄物の性質が安定している廃プラスチック類などを埋め立てる「安定型処分場」、有害物質が基準を超えて含まれる燃えがら、ばいじん、汚泥、鉱さいなどを埋め立てる「遮断型処分場」、遮断型、安定型の対象外の廃棄物を埋め立てる「管理型処分場」の3種類がある。