奈良時代から戦国時代にかけて有力な寺社などが所有した「荘園」の歴史をたどる特別展「荘園の景観と絵図」が8月24日まで、和歌山市湊本町の市立博物館で開かれている。県内を中心に、全国各地の代表的な荘園絵図を一堂に展示。国宝や国指定重要文化財などの他、初公開を多数含む約120点が並んでいる。
26日には展示解説があり、同館の額田雅裕総括学芸員(57)が絵図の見方や特徴を話しながら、荘園の成立から解体までを紹介した。
かつらぎ町にあった●田荘(かせだのしょう・かせは木偏に上下)については2枚の絵図が残され、構図はほぼ同じながら、境界が違っていたり、書き直しがあるとし、領地争いの歴史を物語る資料であると紹介した。
また、紀の川市長田付近にあった荘園を示した「紀伊国井上本荘絵図」には、建物やため池が詳しく描かれており、「あまり知られていないが、文化的に重要な村落景観が存在した」と紹介。「荘園は紀州にとって重要だった。絵図から、当時の人々の暮らしや中世の景観を想像してもらえれば」と話した。
同市の男性(57)は「ポイントを聞きながら絵図を詳しく見ると、いろんなことが読み解けて面白い」と熱心に見入っていた。
8月2日には額田統括学芸員による特別講演、9日には國學院大學文学部の吉田敏弘教授による講演「絵図に見る荘園景観とその保全」がある(ともに午後1時半~)。展示解説は8月17日、23日午後1時半から。問い合わせは同館(℡073・423・0003)。