江戸時代から受け継がれる伝統芸能「御舟歌」の保存に取り組んでいる那智勝浦町勝浦の勝浦御舟謡(みふねうた)保存会のメンバーら7人が20日、和歌山市和歌浦西の紀州東照宮を訪れ、御舟歌を奉納した。同宮では、平成22年に30年ぶりに和歌祭の御舟歌を復活させた唐舩御船歌(とうぶねおふなうた)連中のメンバーが出迎え、伝統の継承に向けて交流した。
御舟歌は、大名の参勤交代などの際に、藩主が乗った舟で歌われたことから広まり、祭礼や儀礼などでも歌われ、引き継がれてきた。
勝浦では、高齢化していた保存会に危機感を感じた、地区で生まれ育ったメンバーが立ち上がり、継承に乗り出した。今回の訪問は、御舟歌が残る同宮への勉強を兼ねた第1回目の奉納となった。おそろいの法被を着た保存会は、本殿に向かって、ゆったりと海を渡りながら歌う伝統の歌を捧げた。
メンバーの一人、中村誓さん(56)は「今回の奉納を機に、心新たに御舟歌を守っていきたいと思います」と話した。
両グループの交流では、それぞれの御舟歌の伝承の歴史、けいこの頻度、今後の伝承方法などについて話し合った。
また、唐舩御船歌連中からは御舟歌の録音CDを贈呈し、勝浦の保存会からは、地元の八幡神社で発見された明治3年作成の御舟歌の冊子が披露された。
唐舩御船歌連中の和田邦宏副代表(56)は「伝承という難しい課題に向かって、お互いに情報交換しながら、御舟歌を守っていきたい」と話していた。