前号に続き、瀬戸内海国立公園の指定80周年を祝う他府県の事例を紹介したい。倉敷市で、日本の夕陽百選にも選ばれている鷲羽山(児島・下津井)の夕景スポットを巡る「夕景鑑賞バス」が運行され、人気を博している。
「夕景鑑賞バス」はJR児島駅を発着地点とし、周辺の宿泊施設を経由、夕景スポット2箇所で各15分の鑑賞時間を設けながら約2時間かけて巡る。お盆期間中を除く、金曜日・土曜日・祝前日に運行され、大人、子ども、ともに一人510円で乗車できる。
日没の時間を考慮したダイヤで、夏至に近い6・7月は午後5時30分に出発、冬至に近い10・11・12月は午後4時に出発。児島地区の特産品であるジーンズ生地をシートにあしらったバスが登用され、地元出身の著名人による案内放送など、観光客へのもてなしも充分だ。
鷲羽山と同じ、日本の夕陽百選に選ばれている景勝地が和歌山にもある。同じく瀬戸内海国立公園の区域である和歌浦・雑賀崎、他にも、由良町の白崎海洋公園・戸津井漁港、白浜町の円月島(瀬戸)・白良浜、高野町の大門、串本町の潮岬がそうだ。
昨今は短い時間単位でレンタカーを利用できるサービスもあるが、路線バスや定期観光バスは個人旅行の友。しかし、日没の時刻に合わせた柔軟な移動が求められる夕景鑑賞に不向きなことも事実。地域の宝といえる景勝地からの夕景を観光客にタイミングよく提供できる「夕景鑑賞バス」のアイデアに感服すると共に、和歌山を訪れる方々にもこのような機会があればと感じた。
(次田尚弘/岡山)