前号では収穫の最盛期を迎えている和歌山オリジナルのイチゴ「まりひめ」を紹介した。昨今、同様に注目されているのが和歌浦漁港で穫れる「わかしらす」。現在、3~5月に漁獲される春しらすの水揚げが始まっている。
「わかしらす」は和歌山の海、和歌浦の「和歌」の文字、イワシの稚魚であるという「若」いという意味が込められているという。和歌浦湾のしらすをブランド化し全国へ発信、地域の活性化につなげようと、旅館組合や漁協、加工業者などが集まり発足した「和歌浦湾のわかしらす協議会」が主体となり、和歌浦漁港交流拠点施設「おっとっと広場」を中心に「釜揚げしらす」や「生しらす」の販売に力を入れている。
農林水産省の調べ(平成24年度)によると、和歌山県におけるしらすの漁獲量は全国10位、生産額は全国7位で、国内シェアの約4%を占める。
漁獲量全国2位、生産額全国1位を誇る静岡県を訪ねてみた。焼津駅近くの海鮮料理専門店では、漁協が定めた「生しらす」ののぼりを店頭に設置。刺身定食などのメニューを注文した客に、小鉢の一品としても提供するなどご当地ならではの新鮮さをアピールした展開が行われていた。しらす丼も販売されており、ネギと土ショウガが盛られ、所によってはシソの葉が添えられているのが特徴。何件か専門店を覗いてみたが、著者が知る範囲では、和歌山のように梅肉と短冊切りにしたシソの葉、のりをふんだんに用いたケースを見ることは無かった。
同じ食材を用いた料理であっても、その地域の特産品を取り入れ、複数の食材をコラボレーションさせることで地域色・独自性が生まれ、ブランドが確立されていく。和歌山ならではのしらす料理を、より多くの方々に味わってもらいたい。
(次田尚弘/静岡)