巨大地震による津波災害から子どもらの命を守ろうと、 和歌山市立名草小学校 (山本紀代校長) の育友会が中心になり、 地域住民や学校、 保護者らの協力を得て、 同校の裏に位置する名草山の海抜25㍍地点に続く津波避難路を完成させた。 一次避難場所になっている同校の北と南側の2カ所に登り口を造り、 道を舗装して手すりや階段を整備。 児童や地域住民が約5~10分で駆け上がることができる。
県が発表した最新の浸水想定では名草地区一体で浸水の恐れがある。 同校の3階は海抜17㍍あるが、 全児童 (22日現在401人) と地域住民が3階に避難するのはスペース的に難しい。 また、 児童らが近くの高台まで逃げるには道幅が狭かったり、 住宅街で道が入り組んでいたりして、 迅速な避難が困難だと懸念されていた。
東日本大震災以降、 当時の育友会長の武田慎介さんらが危機感を募らせ、 子どもの 「命を守る」 ことを大前提に市や県主催の災害に関する講座を受講。 津波から逃げるための高台を同校の裏にある名草山に決め、 名草地区連合自治会や地域住民らに避難路を整備するための協力を呼び掛けた。
工事費用は市が自主防災組織を対象にした補助金と地元企業、 自治会、 育友会、 保護者らからの寄付を合わせて370万円。 ことし1月から寄付を募り、 2月に着工した。 避難路となる場所の木を伐採し、 コンクリートや擬木で造った階段は全部で110段、 途中平らな場所も設けた。
22日、 6年生80人が初めて完成した避難路を使った訓練を行った。 教師の先導で児童たちは休むことなく一気に駆け上がっていった。 3組の中硲萌衣さん (11) は 「いつ来るか分からないからパニックになりそうという心配もある。 でも、 自分の命を守るためにも逃げたい」 と話していた。
今後は小学校、 地域住民、 近くの保育所・幼稚園などと合同訓練を計画しており、 武田さんは 「避難するための道はできた。 誘導灯やトイレなどさまざまな意見をもらっている。 さらにみんなで整備、 維持管理を進めていければ」、 山本校長は 「皆さんの理解と協力があってできたこと。 地域の避難路として活用していきたい」 と話している。