旅の楽しみの一つ「食」。目的地へ向かう列車の中で、ご当地の食材を使った食を楽しめる「駅弁」は旅情をそそるものがある。
最近は「駅弁」に加え「空弁(そらべん)」も人気だ。「空弁」とは空港や機内で食べる弁当の愛称として10年程前から使われるようになった言葉。列車に比べ座席が狭いことから、小さなテーブルに載せられる容器で、手を汚さず食べやすいサイズに工夫されていたり、気密性の高い機内でも周りの乗客の迷惑とならないよう匂いが強くない食材が選ばれるなどの考慮がされている場合が多い。
先日、中部国際空港を利用した際、ターミナルの一角に「空弁」を販売するコーナーを見つけた。名古屋コーチンを使ったとりめしや、味噌カツのカツサンドなど、種類も豊富。お昼前にもかかわらず売り切れとなる商品もあり、なかなかの人気ぶりだ。
人気の背景には、近年、航空券の電子化で搭乗手続にかかる時間が短縮され空港での滞在時間が短くなったことや、格安航空会社(LCC)で安く早く食事を済ませたい客が多いことがあげられる。筆者も度々「空弁」を利用する。列車に比べ車窓の風景に大した変化もなく、気流が安定しているうちに黙々と食べてしまうが、温かいスープやコーヒーの提供を機内サービスで受けられることもあり満足している。
伊丹空港では「紀州めはり寿司」や湯浅沖でとれたサバを使った「紀州さば浜ずし」が空弁として販売されている。食と観光の連携は地域活性の要となるもの。熊野の文化、紀州の海の幸への興味を引き出す契機となってほしい。
(次田尚弘/和歌山)