半導体の品質管理に必要な測定器や解析装置の開発・製造メーカー、阪和電子工業㈱(和歌山市大垣内、長谷部巧社長)は、約30年前、電子機器の故障の原因となる「静電気」という新たな分野に着目。電子機器市場の成長とともに地位を確立し、現在、静電気放電技術を用いた測定・解析装置では国内トップシェア(70%)を誇る。半導体に影響を与える静電気を〝見える化〟した「静電気可視化装置」など、時代や社会のニーズを捉えた新たな取り組みも進め、最先端技術の世界に挑戦し続けている。
半導体は、携帯電話やパソコンといった電子機器内でたくさん使用されている部品の一つで、静電気に弱く、電子機器の故障原因になることも多い。各半導体メーカーは、静電気により強い半導体を作ることが必要で、半導体の集積・微細化が進む現在、ますます静電気耐圧強化が求められている。
1980~90年代は、国内の電子機器が発達し、半導体の端子数も増加。それまで人の手で一つひとつ静電気の検査を行っていたが、追い付かなくなってきた。同社は、取引先から「検査が自動でできないか」と相談を受け、自社製品を作ろうと発案。半導体の静電気に対する耐久性を検査する装置「静電気放電(ESD)検査装置」が誕生し、国内トップシェアを築いた。
約7年前には、新規開発の専門部署を設置。目では確認できない静電気の帯電状況をLEDの色で判別することができ、その色の濃淡で電圧の強弱が分かる業界初の製品「静電気可視化装置」を開発した。また、ピンポイントで問題のある太陽光パネルを見つける「太陽光システム故障診断装置」や、静電気を中和させることで静電気をなくす「エリア除電システム(OME製品)」なども製品化し、注目を浴びている。
長谷部社長(56)は「開発の原点は取引先からの要望。世の中の変化をいち早くキャッチして、タイムリーに届けていける企業を目指している。自分たちの作った製品がみんなの役に立つことを願って、ものづくりに取り組んでいきたい」と話している。