いまなお原因不明の統合失調症について、県立医科大学(和歌山市紀三井寺)は19日、MRI画像により患者脳内の「ミエリン」量を数値化し、患者はミエリン量が低下(形成不全)していることを世界で初めて証明した、と発表した。「発症前の早期発見、早期治療に大いに貢献できる可能性がある」としている。
同大によると、統合失調症は約100人に1人が発症するといわれている精神疾患の一つ。自閉、幻覚、妄想などの症状がみられる。
ミエリン(髄鞘)は、神経細胞からの情報伝達を担う「軸索」を覆い、情報伝達を促進する役割がある。同症の原因の一つとして、その形成不全が推測されていたが、実証されていなかった。
研究は同大生理学第一教室、神経精神医学教室、和歌山南放射線科クリニックが共同で実施。脳のMRIで「T1強調画像」「T2強調画像」の2タイプの画像を解析したところ、画像の信号強度はミエリン量を反映し、健常者、患者とも年齢とともに低下したが、どの年齢でも患者は健常者よりも低い値を示した。
特にミエリン形成不全は、大脳の「白質」のみならず「灰白質」にもあることを世界で初めて示したという。
形成不全は発症の何年も前からあると考えられており、早期発見し発症を予防できれば社会的意義は大きいとしている。今後は、信号値に影響を与える物質の除外▽ミエリン量が低下していない同症の病態の解析▽臨床応用のための正常データ(特に若年層)の蓄積▽同症以外の脳疾患での解析―が課題になるという。
研究の発案などを行った生理学第一教室の金桶吉起教授、被験者データ作成などを行った神経精神医学教室の篠崎和弘教授、画像解析などを行った大学院生の石田卓也さんが会見し、発表した。
金桶教授は「発症してから治療するのは非常に難しい。予防できればそれほど良いことはなく、それに向けた研究に応用していける」と話した。