戦時下の人々の暮らしを知ってもらおうと、和歌山市立博物館(湊本町)は8月2日まで、同館内のコーナー展示「戦時下の人々」で、市民から寄贈された資料を展示している。戦後70年を迎えて戦争体験者が少なくなる中、同館では記録と記憶を継承していこうと、戦時下の資料の調査や収集、保存に力を入れている。近年、故人の遺品などを整理する中で家族から資料として寄せられるケースも増えているという。
展示では軍服やかぶと、ポスター、水筒や飯ごうの他、従軍手帳や陸軍の教科書など約40点が並ぶ。
このうち、旧制和歌山中学校(現桐蔭高校)に通っていた生徒が昭和13年に書いた旧満州・朝鮮への修学旅行記には、東和歌山駅(現和歌山駅)から鉄道に乗り、下関から船で釜山に渡ったことなどが記されている。
昭和18年の、太平洋戦争開戦2周年を記念して作られたポスターには、桃太郎の鬼退治に見立て、日本がアメリカを攻撃に向かう様子を描写している。
また、常設展の一部でも戦争の恐ろしさを伝えており、日中戦争への出征写真や、太平洋戦争の開戦を伝える昭和16年の和歌山新聞の記事、戦後の墨塗りの教科書など約70点を展示。その他、潮岬に墜落したB29の機関銃や戦闘機の機銃弾薬莢(きょう)、美山に落ちたB29のラジエーターなど、和歌山大空襲の関連資料も並んでいる。
子どもたちの勤労動員や和歌山大空襲、戦後の復興を紹介するモニター画面もあり、画面に触れると各3分程度の映像が流れる。
同館の佐藤顕学芸員(36)は「戦時下を生きた人たちの営みを感じ取ってもらえれば。当時の資料を間近に、戦争の忌まわしさを記憶として残すきっかけにしてもらいたい」と話している。
午前9時から午後5時(入館は4時半まで)。月曜休館。入館料は一般・大学生100円、高校生以下は無料。問い合わせは同館(℡073・423・0003)。