文化庁の文化審議会(宮田亮平会長)は、県出身の博物学者・南方熊楠(1867~1941)が保護に力を入れた紀南地方の景勝地や神社13カ所を「南方曼陀羅(まんだら)の風景地」として新たに名勝に指定すること、史跡「熊野参詣道」に熊野古道の「紀伊路」を加え、海南市から串本町にかけての24カ所を追加指定するよう下村博文文部科学大臣に答申した。これにより県内の名勝は12件、史跡は26件(件数変更なし)となる(写真はいずれも県教委提供)。
新たに名勝に指定される見込みとなった「南方曼陀羅の風景地」は、現在も天然風景が維持されている13カ所、114万8057・45平方㍍。継桜王子(田辺市中辺路町)や天神崎(同市目良)、九龍島(串本町)など、熊楠らの努力によって合祀(ごうし)を免れた神社や、合祀後に復社した神社の境内、粘菌類などの植物観察に適した場所として保護を訴え、熊楠の精神が受け継がれてきた景勝地。
熊楠は日本の環境保護運動に先駆的な役割を果たし、明治45年に植物病理学者の白井光太郎に送った意見書で「わが国特有の天然風景はわが国の曼陀羅ならん」と述べている。
「特有の天然風景」は、大日如来を中心とする真言曼陀羅のように自然や人文の総体が持つ有機的な体系の重要な部分であるとし、自然界の現象を方法論として複雑な図に描いたことにちなみ、南方曼陀羅の風景地とした。
また今回、熊野参詣道に追加されるのは、藤白王子跡(海南市)や糸我峠(有田市)、稲葉根王子跡(上富田町)などの9市町24カ所、延長16・4㌔、8・9㌶。追加指定後は延長213・2㌔、面積138・5㌶となる。
その他、昭和52年に史跡に指定された「高野山町石」について、三谷坂、京大坂道不動坂、黒河道、女人道の4カ所を加えて「高野参詣道」と名称変更することも答申した。