和歌山電鉄㈱(本社・和歌山市伊太祈曽)貴志川線で「駅長」として愛され、活躍した三毛猫のたま(メス、16歳)が22日夜、入院中の動物病院で死んだ。同社は28日午後0時30分から、貴志駅(紀の川市貴志川町神戸)で社葬を営み、同線再建に大きく貢献したたまの安らかな眠りを願い、天国へと見送るとともに、「名誉永久駅長」として同線の歴史に名を刻み後世に伝えていく。
たまは平成19年に駅長に就任。動物駅長の先駆けとして注目された。その後は、スーパー駅長、ウルトラ駅長、常務執行役員と昇進し、25年には同社ナンバー2の社長代理にまで上り詰めるスピード出世で、猫ファンや鉄道ファン、地域に次々と明るい話題を振りまき続けた。
日本の観光名所を代表するスターとして、多くの外国メディアにも取り上げられ、県内、国内にとどまらず世界的な観光客誘致に貢献したことから、県から20年に「県勲功爵(わかやまでナイト)」、23年に「県観光まねき大明神」の称号が授与されるなど、その功績は広く認められてきた。
たまは、人間の年齢で80歳に当たる長命だったが、突然の訃報に衝撃が広がり、自治体トップからも惜しむメッセージが寄せられた。仁坂吉伸知事は「観光のスーパースターとして国内外から絶大な人気を誇り、県の観光振興に大いに貢献されました」、和歌山市の尾花正啓市長は「別れは寂しい限りではありますが、これからも貴志川線の社長代理ウルトラ駅長として将来にわたって貴志川線を見守っていただきたいと思います」、紀の川市の中村愼司市長は「訃報に接し、深い悲しみでいっぱいです。たま駅長の功績に深く感謝するとともに、心からご冥福をお祈りします」とそれぞれ追悼している。
貴志駅には献花台が設けられ、たま駅長を愛したファンらが訪れ、別れを惜しんでいる。
長年の活躍に感謝 沿線住民ら惜しむ
貴志川線の利用促進活動を進めている貴志川線の未来を〝つくる〟会の濵口晃夫代表(73)は「たま駅長は貴志川線の存続のため、先頭に立って盛り上げてくれただけに大変残念」と悲しんだ。
「駅長に任命され、駅の改札で乗客を出迎えていたあの頃が今でも懐かしく思い出される。招き猫として16年も長生きし、本当に頑張ってくれた。いまは『ありがとう、ごくろうさん。安らかに眠って』と言いたい」と話した。