太地町の追い込み漁で捕獲したイルカの展示が倫理規定に違反するとして、世界動物園水族館協会(WAZA、本部・スイス)が日本動物園水族館協会(JAZA)の会員資格を停止し、除名を勧告していた問題で、JAZAは20日、WAZA残留の賛否を問う会員投票を東京都内で行い、「残留」が多数を占めた。
JAZAには動物園89、水族館63の計152施設が加盟し、このうち約30の水族館が太地町からイルカを入手。投票では99施設が「残留」、43施設が「離脱」と回答した。
残留決定により、WAZAの倫理規定に従い、今後は追い込み漁で捕獲したイルカは入手しないことになるが、JAZAの荒井一利会長は20日の記者会見で「イルカの入手が困難になったことで、日本の水族館は極めて不利になった」と述べ、今回の問題の経緯に「WAZAに海外の反捕鯨団体からの圧力があったことは間違いない」との認識も示した。
国内各地の水族館で集客力のあるイルカショーが今後、継続できなくなる事態も想定される。
太地町のイルカ漁に対する批判は、漁を隠し撮りするなどして作られたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の公開以降、激しくなり、海外の動物保護団体などが太地を頻繁に訪れ、抗議行動などの圧力を続けてきた。
今回のWAZAの除名勧告をめぐっても、オーストラリアのイルカ保護団体がことし3月、WAZAにJAZAの除名を求める訴訟をスイスの裁判所に起こしたことなどが遠因の一つとみられる。
JAZAの決定を受けて鎌塚拓夫県農林水産部長は「県としては、もともとのWAZAの処分自体を遺憾に思っている。繁殖した個体の展示は良くて、野生から入手した個体の展示が悪いとする理由が分からない。昔の漁獲方法のイメージを持ち出して残虐と批判されるが、現在太地町で行っている追い込み漁の捕獲方法は改善されており、認識が間違っている」とのコメントを発表。今後はWAZAの認識を正すよう国に働き掛けていく考えを示した。