高野山開創1200年に合わせた特別展「高野山開創と丹生都比売(にうつひめ)神社―大師と聖地を結ぶ神々」が、6月7日まで、県立博物館(和歌山市吹上)で開かれている。丹生都比売神社(かつらぎ町)の神々にまつわる歴史の謎をひもときながら、高野山とその文化圏の豊かな魅力を紹介するもので、初日から大勢が足を運んでいる。
同神社は、平成16年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録。同神社にまつられる丹生明神は、空海に高野山と周辺の広大な領地を譲ったと伝えられている。
同展では重要文化財や県指定文化財を含む50件71点を展示。初日の4月25日に行われたミュージアムトークでは弘法大師空海と、開創に力添えをした豪族丹生氏の関係や、同神社に祭祀されさまざまな謎がある丹生高野四社明神について、同館の大河内智之主査学芸員が説明。約50人が熱心に聴き入った。
展示資料のうち、鎌倉時代初期に造られた木型の神像(かつらぎ町三谷薬師堂蔵)と銅製の神像(個人蔵)は、丹生高野四社明神を表した最古の神像。銅製とその木型両方が残された日本唯一の作例で、大河内主査学芸員は「3年前の調査で明らかになったもので、木型が現存するのは奇跡的」と紹介。
同神社が各土地の神を合祀することで周辺の支配を確実にしてきた経緯などを話し、「丹生明神は仏教と深い関わりを持ってきた。丹生都比売神社を神仏習合の空間であるとイメージしてお参りしてもらえれば、地域の歴史の見え方も変わってくるのでは」と話した。
先日、高野山と同神社を訪れたという同市の女性(80)は「あらためて行きたくなりました。元寇の時に出陣したという丹生四社明神像の資料は興味深いです」と見入っていた。
特集展示「高野山と有田川流域の仏教文化」も同時開催。大河内主査学芸員による記念講演会「丹生高野四社明神をめぐる地域史―新出の女神像を中心に」は31日午後1時半から、県立近代美術館2階ホールで(申し込み不要)。
学芸員による展示解説は5月3日、23日、6月6日のいずれも午後1時半から。問い合わせは同館(℡073・436・8670)。