文化財に残された災害の記憶を後世に伝えようと、県立博物館(和歌山市吹上)は、御坊市などでの現地調査の内容をまとめた小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝えるⅠ』(A5判、16㌻)を3万部作成した。3月8日まで同館で希望者に無料配布しており「今後県内でも起こりうる災害に備え、私たちの命と貴重な文化財を守る活動の一助になれば」としている。
同館では26年度文化庁の助成を受け、県文化遺産課や県立文書館、県内外の歴史研究者協力のもと、4市町(御坊市、美浜町、日高川町、那智勝浦町)で、寺社の記念碑や古文書などを調査。体験者への聞き取りを交え、地域に眠る災害の記憶の掘り起こしに取り組んできた。
また、文化財が被災すればその保全が必要となる。あらかじめどこに何があったかを把握しておく必要があると、仏像のデータを記録するなど文化財の所在確認も行った。
小冊子は、調査地域の住民に配布。取り上げた過去の災害は、宝永地震津波(1707年)▽安政地震津波(1854年)▽明治大水害(1889年)▽昭和東南海地震津波(1944年)▽紀伊半島大水害(2011)――。
石碑や古文書に記された被害の状況などを、現代語訳を添えて分かりやすく解説。紀伊半島大水害時の文化財レスキュー活動の様子も写真入りで紹介している。小冊子の内容は、同館ホームページからダウンロードすることもできる。
問い合わせは同館(℡073・436・8670)。