1890年に串本町樫野沖で遭難したトルコ軍艦「エルトゥールル号」を題材にした、日本とトルコの合作映画『海難1890』の同町での撮影が進んでいる。23日には撮影現場で出演者らが会見し、田中光敏監督(56)は「映画のテーマは『真心』。125年続いている日本とトルコの友情や絆を、しっかりと映画に込めたい」と意気込みを語った。時空を超えた両国の絆の物語が、次第にかたちになりつつある。
映画は、500人以上の犠牲者を出したエルトゥールル号遭難事故で、同町大島の住民が献身的な行動で乗組員69人を救出し、その95年後のイラン・イラク戦争時に、トルコが恩返しとして、テヘランに残された日本人のため救援機を飛ばしたことを含め、両国の友情の絆を描くもの。東映が製作・配給し、映画『利休にたずねよ』などで知られる田中監督がメガホンをとる。
撮影は先月中旬に京都などでスタート。串本での撮影は今月中旬から行い、2月上旬まで3、4カ所で予定。2月中旬からはトルコでの撮影を控えている。
元紀州藩士で紀伊大島に住む医師役を内野聖陽さん(46)、エルトゥールル号の海軍機関大尉を人気トルコ人俳優のケナン・エジェさん(34)、医師をサポートし、紀伊大島に住むヒロイン役を忽那汐里さん(22)が演じる。その他、夏川結衣さん、小澤征悦さん、竹中直人さん、笹野高史さんら豪華俳優人が脇を固める。
映画にも出演する同町出身の東さとさん(33)が方言指導し、紀伊大島の言葉が盛り込まれている。地元を含め県内の120人がエキストラ出演を予定している。
撮影現場では、同町トルコ文化協会メンバーや古座・田原地区の女性有志が炊き出し。早朝から準備したトルコ料理やサンマ寿司などで出演者をもてなした。
内野さんは「監督からは、樫野を代表する良心を表現してほしいと言われた。必死になって他者を思う心を大切に演じたい」、忽那さんは「地元の方たちにとって、トルコとの友好がとても大切なものだと感じながら撮影しています」と話し、田中監督は「世界に向けた平和の宣言となる映画。文化や国境、宗教を超えたところで、何かを感じられる作品になれば」と期待を込めた。