秋の全国交通安全運動(21~30日)が始まる。交通事故に巻き込まれないように子どもたちに配布されている、目立つ黄色い帽子やランドセルカバー。全国的に広まっているこれらの黄色グッズのアイデアは和歌山市から生まれたものだった。県警OBで和歌山西、東署の署長や本部刑事部長を務めた同市東高松の小弓場(こゆば)弘文さん(86)が発案のいきさつを証言してくれた。
小弓場さんが和歌山西署警ら交通課長だった昭和36年ごろ、車社会が到来し、信号無視などによる交通事故が急増していた。子どもの犠牲や事故を防ごうと、課員らとともに、市内の三年坂でドライバーを対象にした赤、黄、青の識別実験を実施。実験の結果、黄色が一番目に付きやすいことが判明し、「黄色の帽子を作って子どもに配付しよう」と決めた。
この時の実験を取材した全国紙が1面に成果を掲載。記事は大きな反響を呼び、紙面を見た大手化学繊維会社の重役が、小弓場さんらを訪れ、「このアイデアを全国に広めさせてほしい」と頼み込んだことで、黄色の帽子やランドセルカバー、カッパの製造が始まったという。当時大流行していたスリー・キャッツの歌謡曲「黄色いサクランボ」との相乗効果もあり、これらの交通安全グッズは爆発的に広まったという。
市の交通情勢を長きにわたり見てきた小弓場さんは、「もう一度、交通安全意識を原点に戻って考え、子どもたちなどが悲惨な事故に巻き込まれないような社会を守ってほしい」と語っている。