ことし結成30周年を迎えた和歌山市精神障害者家族会「つばさの会」(岡田道子会長)は、これまでの歩みをまとめた記念誌「つばさの旅路」を発刊した。岡田会長(67)は「30年の歴史が凝縮された記念誌。家族の生き様が赤裸々につづられています。これまで隠れるように生活してきた家族たちの、前向きな成長が感じられます」と話している。記念誌に加え、精神障害者を家族に持つ73人のアンケートを集約した実態調査の報告書も作成した。
つばさの会は昭和59年9月、精神障害者を抱える母親ら11人で発足。「地域で精神障害者が当たり前に生活できる社会を」と、市民に理解を訴える啓発や、当事者とその家族の支援などに取り組んでいる。現在は会員が約50人おり、毎月の定例会や、心の病などの悩みに会員が耳を傾ける「心の家族電話相談」を平成17年6月から毎月2回実施している。
記念誌には、会員14人が、偏見の根強い社会と向き合い、数々の困難を乗り越えてきたありのままの実体験をつづっている。さらに、行政、医療をはじめ同会の活動を知る各分野の団体の関係者37人が、30年の歴史をたたえる言葉を寄せている。
実態調査報告書は和歌山社会経済研究所の協力で作成。家族が直面する医療や就労、災害の備えといった問題の他、障害者に提供される各種サービスの認知や利用の状況などがまとめられている。
「子どもの異常に早く気付き、最適な環境へ」。発足30年を迎えた今も、依然として多くの課題が残る。精神障害は早い段階で対処すれば重症化を避けられることがあるが、目に見えにくいため早期発見は難しい実態がある。また、精神障害を認めたくない親もおり、受診が遅れてしまうという。
同会は学校、家庭、専門家の3者が連携し、子どもの異変にいち早く気付くことができる体制を整えること、親の死後でも、残された精神障害者が安心して生活できる地域を形成することが必要と、今後の課題を見据えている。
電話相談をきっかけに入会した西本晴美副会長(56)をはじめ、事務局の塩谷えう子さん(64)、大橋緑さん(69)は同会について「人に話しづらい内容でも共有でき、肩の力が抜ける場所。元気が沸いてくる」と口をそろえる。
岡田会長は「子どもが精神障害であることを言う必要もないが、隠す必要もない。障害を批判する人もいるだろうけど、必ず支えてくれる人がいる。地域での支援者を増やすことで、親亡き後の子どもを支えてくれる地域がつくられる。だからこそ、親が今できることをやっていかないといけない」と力を込めた。
記念誌、報告書についての問い合わせは、塩谷さん(℡073・444・1505)へ。