事件の鑑定書を偽造したとして証拠隠滅と有印公文書偽造、 同行使の罪に問われた県警科捜研の元主任研究員、 能阿弥昌昭被告 (50) の初公判が和歌山地裁 (浅見健次郎裁判長) であり、 この日結審し論告で検察側は 「科捜研の信頼を損ないかねない犯行」 などとして懲役2年を求刑した。
裁判冒頭で浅見裁判長から起訴内容について問われた能阿弥被告は 「その通り間違いありません」 と静かに述べた。 被告人質問で弁護側から犯行に至った経緯について問われた能阿弥被告は、 職場で上司との人間関係がうまくいっておらず、 複数の事件で検査結果の波形図が不鮮明だったことなどについて上司に指摘されることを嫌がらせだと思い込み、 苦痛だったため別事件の書類を流用したと認めた。
弁護側は最終弁論で、 平成10年に和歌山市園部で発生した毒物カレー事件で当初、 毒物がシアン化合物と判断してヒ素と見抜けなかったことを受けて、 その後に科捜研の信頼性を高めるために大学院に通い研究に励むなど、 勤勉な性格を示した上で、 「人事異動もない職場で精神的に追いつめられていた。 真摯に反省している」 などとして執行猶予付き判決を求めた。
起訴状などによると、 能阿弥被告は平成22年5月6日ごろから24年1月12日ごろまでの間、 各警察署から嘱託を受けた6事件の鑑定について、 別事件の分析データ26枚を流用して上司の決裁を受け回答したなどとされている。 同事件では、 裁判で3人が有罪判決を言い渡されているが、 鑑定結果が証拠として法定に提出されていないため影響はないという。