ニホンウナギが国際自然保護連合(スイス)によって絶滅危惧種に指定され、注目される今後の動向。百数十年前からウナギと焼き鳥の販売を続けている老舗「トリハル」(和歌山市南大工町)の4代目、田中利明社長(57)は「これまで乱獲を続けてきた日本へのイエローカードだ」と訴える。
徳島、鹿児島の国産ウナギと、代々受け継ぐ秘伝のたれにこだわる同店。現在の店頭販売価格(100㌘)は昨年同時期より200~300円値上げし、過去最高の1500円。15年ほど前の倍近い値段だ。
値上げは顧客の足を徐々に遠ざけ、売上を下げている。
今回の絶滅危惧種指定を受けて田中社長は、大手チェーン店などがウナギを大量に安く仕入れ、低価格で販売している現状に警鐘を鳴らし、「それが資本主義なのかもしれないが、これまで乱獲し過ぎだった。大事に扱いなさい、ということ」と所感。「今後さらに値上がりするかもしれない。ことしの丑(うし)の日は十分に入荷できるかどうか」と不安を口にする。
市内では近年、書店、和菓子屋など老舗の閉店が相次ぐ。12日の絶滅危惧種指定の報道後、「昔からの店がどんどん閉まってしまう」と心配してくれる客もある。
今後、万一ウナギが販売できなくなったとしても焼き鳥で営業を続ける方針。「うちのウナギが食べたいと言ってくれる人がいる限り、売ったらアカンと言われるまで一生懸命、商売を続けたい」と話す。