教員を目指す大学生に“本物”の日本の伝統芸能にふれる学びをしてもらおうと、和歌山大学(和歌山市栄谷)で28日、同市の重要無形文化財保持者の能楽師・小林慶三さん(82)を講師に迎えた講義が始まった。
教育学部の菅道子教授が担当する中等音楽科の授業の一環で、昨年に続き2年目。同大学によると、国立大学で日本の伝統芸能の実践授業は極めて珍しく、7月まで全4回の集中講義で、能の代表的な演目「羽衣」の謡(うたい)と型(舞)の習得を目標にしている。
初回の講義には3回生6人が参加。小林さんが謡の構成や記号の読み方を説明し「コーラスと違い、発声は下腹に力を入れて力強く」とアドバイス。小林さんの手本に続き、独特な節回しを謡い上げた。
型のけいこでは、扇の開き方にはじまり、重心を低く落とす歩き方、後退しながら両腕を横に広げる所作や体の向きを変える際の足の運びなど、基本的な動きを教わった。
伊東真吾さん(20)は「西洋の音楽のリズムや音階と違い、不思議な感覚。正確な音の幅があり、聞いているだけでは分からない発見がありました」と話し、長戸かおりさん(20)は「プロの先生に指導してもらえるのは貴重な機会。これまで能は特別な世界で自分とは無関係に思っていましたが、日本の伝統文化を子どもたちに伝えていかなければと、今は強く感じます」と話していた。