和歌山城や那智山青岸渡寺(せいがんとじ)、懐かしい水車小屋に、銀河鉄道999のSL列車まで――!? 和歌山市延時のスーパー「松源」栄谷店(林和彦店長)の駐車場の一角には手作りジオラマが広がり、ちょっとした癒やしスポットになっている。手掛けるのは、同店で夜間管理のパート職員として働く同市向の佐藤正二さん(71)。佐藤さんは「子どもさんからお年寄りまで、お客さんが喜んでくれるのが何よりうれしい」と笑顔で話している。
佐藤さんは住友金属工業を定年退職後、同店で働くように。盆栽や植木の手入れが好きだったという佐藤さん。当初、植え込みスペースには雑草が生い茂り、空き缶などが捨てられているのが気になったという。
「来店客の心が和むようなスペースに」と林店長に相談。約4年前から、草刈りや木の手入れを任されるうちに、竹細工で立体的な建物を作るようになった。
主なスペースは駐車場内に4カ所あり、佐藤さんいわく〝松源の庭〟。同店入り口付近には和歌山城や大阪城、錦帯橋など、代表的な観光地のスペースが広がる。それぞれをつなぐように流れる川は熊野川をイメージ。川下りの船頭も再現されている。竹細工は一つひとつを針金でつないでいく細かい作業で、城の場合、仕事の合間を縫って一日3、4時間、1カ月ほどかけて完成させるという。
子どもたちが喜ぶからとSL列車も登場。「体が弱いから遠くへ行けないけど、富士山を見てみたい」というお客さんのために、富士山周辺を再現したスペースもある。ふもとの湖には水面に映る「逆さ富士」まで描き、季節に応じて桜を描き添えたり、雪化粧した冬バージョンにするなど変化を持たせる工夫も。
その他、動物たちもあちらこちらに隠れており、よく見ると周辺のツゲの木はツルやカメ、クジャクなどの形に剪定(せんてい)されている。
そんな佐藤さんの手間暇かけたジオラマが話題となり、これまで別のスーパーで買い物をしていたが、同店へ通うようになったという客もいるほど。この日訪れた常連客の女性(62)も「来るたびに変わっているので毎回楽しみなんです」とにっこり。今では「植木屋のおっちゃん」として親しまれ、子どもたちともすっかり顔なじみ。
佐藤さんは「お客さんからリクエストをもらったり、声を掛けてもらって励みになります」とにっこり。「次は姫路城を制作したいですね」とさらなる意欲を燃やしている。