農業関連ベンチャーの農業総合研究所(本社=和歌山市黒田、及川智正代表取締役・CEO)は14日、同市西田井の渡辺産業運輸の倉庫内で、生産者が収穫した農産物をいったん持ち込む「和歌山集荷場」の運営をスタートさせた。県内7カ所目、市内では初めて。一つの集荷場から、翌日には京阪神の約80店舗に届ける。独自の流通システムで生産者の販路を広げ、持続可能な農産業への新たな仕組みづくりとして注目される。
生産者は午前11時~午後3時の間に農産物を集荷場に持ち込み、出荷先や価格を自由に決める。翌日にはスーパーなどに設けた「農家の直売所」で販売。鮮度の高い産地直送の野菜や果物を求める生活者と生産者を結ぶ。
農産物の売り上げの60~65%は生産者のもうけとなり、売れると生産者のもうけは増えるが、売れ残ると価格を下げたり、廃棄されたりしてもうけにならないリスクもある。売れ残りのロスを減らすため、集荷場スタッフが店頭での売れ行きなどの日々の情報を伝え、それによって生産者は翌日の出荷量を決めることができる。
この日は、生産者らが朝採りのエンドウやチンゲンサイなどを持ち込んだ。生産者は同社独自のバーコードシステムを使って販売先を選び、値札を印刷。袋詰めした商品に貼り付け、出荷先の店舗名が書かれた場所にコンテナを置いていった。渡辺産業運輸の渡辺勝年会長(69)は「作っている農産物をどう販売していくか。関西でのパイプをつくり、販路を広げていくことは大切。地域の人のためになれば」と話していた。
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同社は半年で生産者100人との契約、月間流通額1000万円を掲げている。現在、県内において、同社の持つ入荷や売り上げの管理データを開示した「農家ポータルサイト」を生産者に試験的に提供している。
全国の生産者は3676人、販売先は255店舗(4月14日現在)。及川代表取締役・CEOは「和歌山集荷場から全国の店舗に出荷できる仕組みや、『農家ポータルサイト』を活用して生産者と生活者の情報をダイレクトにつなぐ仕組みをつくる。そして、この事業モデルを日本全国に広め、海外展開を目指す」と話している。