イタリアで開催されたローマ国際ろう映画祭「CINEDEAF(シネデフ)」の学校部門で、紀の川市出身の岩田直樹君(18)が制作した短編アニメーション2作品が入賞した。ろう学生による短編映画などにフォーカスを当てた映画祭。岩田君は猫が登場する両作品で「参加証」、1作品で特別賞「最優秀短編アニメーション賞」に輝いた。
映画祭は国立ローマろう研究所が主催し、昨年11月29日~12月1日に開催。先月21日に公式の受賞発表があった。
聴覚障害者が制作した映像をイタリア、米国、日本などの手話を交えて上映するもので、今回で2回目。
世界各地から作品が寄せられ、審査の結果、上映作品に決まると「参加証」が与えられる。学校部門は12作品が選ばれた。
岩田君の作品は、何枚もの写真を組み合わせて映像にする技法「ストップモーション」で制作。作品「Cat Love Story」は約1800枚、「The Chase~追いかけっこ~」は約1600枚の写真を使った。ともに5分程度の映像。
特別賞を受けたCat LoveStoryは、雌猫に一目惚れした雄猫が、一度は振られながらもハートの四つ葉のクローバーをプレゼントして恋を実らせるストーリー。チョコやクッキーなどのお菓子の町を背景に、切り絵の猫が一こま一こま、物語をつくる。審査員を務めたろう者の演出家は「自分は耳が聞こえないけれど、映像を見ているとまるで音楽を聴いているようだった」と評価した。
岩田君は先月、県立和歌山ろう学校(和歌山市砂山南)を卒業。高校1年生の時、文化祭に合わせて初めての映像作品「The Chase」を制作した。また「平成23年度さがの聴覚障害者映像祭」(全国手話研修センター主催)に出品し、最優秀賞を受賞した。以来、毎年同映像祭に参加し、同センターからシネデフへの推薦があった。
今月、筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科(茨城県)に入学する岩田君は、「世界で認められたようで、驚きとうれしい気持ちがあります」と笑顔。「平面デザインもムービーも手掛けるグラフィックデザイナーになりたい」と夢をふくらませている。
またシネデフをきっかけに、受賞作品はフランスのろう学生による映画祭「Sourd Mietrage」(5月13~15日、フランス)で上映する予定になっている。
Cat’s Love Storyの一こま